2016年1月1日 金曜日

鷹ノ巣山・雲取山

 1,737 m 2,017 m

 大晦日の夕方に3時間仮眠を取って、元旦0時20分に自宅を出発。2時20分に東日原の駐車場に到着して2時40分登山開始。人気のない暗闇の登山道を1時間ほど歩くと風が強くなり始め、あまりの寒さにヒルメシクイノタワからは着られるものを全て着込んで歩いた。カメラは寒さのために作動しなくなり、素手で温めての写真撮影が結局雲取山まで続いた。時間を調整しようとゆっくり歩いたものの、日の出時刻の50分前に鷹ノ巣山山頂に到着。山頂の風は穏やかだったが、待っている間に身体が冷えた。手足の感覚がなくなってきた6時50分、鮮やかな初日の出を拝むことができた。その後、巻き道をつかうことなく各ピークを踏んで雲取山へ向かったが、七ッ石山の上りですでに足が攣りそうになり、野陣尾根の長い下りと2時間の林道歩きで、最後は足が言うことをきかなくなった。かなりの強行軍に日没前の下山を危ぶんでいたが、時間的には余裕をもって下山できた。

 帰りは渋滞もなく道路はスムーズだったが、絶え間なく睡魔が襲ってきて、登山よりもつらく感じた。帰宅した時には精根尽き果てていたが、新しい年をよい形でスタートできた充実感もまた大きかった。

登山コースデータ
単純標高差 : 1,397 m
累積標高差 : 2,675 m
コース距離 : 26.9 km
標準コースタイム : 12 時間 5 分
歩行データ
総歩行時間 : 10 時間 35 分
総行動時間 : 12 時間 45 分

 コースタイム

東日原P 2:40 ⇒ 稲村岩分岐 3:40 ⇒ 5:15 ヒルメシクイノタワ 5:20 ⇒ 6:00 鷹ノ巣山 7:05 ⇒ 7:20 鷹ノ巣山避難小屋 7:30 ⇒ 日蔭名栗山 7:55 ⇒ 高丸山 8:20 ⇒ (10分休憩) ⇒ 千本ツツジ 8:55 ⇒ (ウソ撮影10分) ⇒ 七ッ石山 9:25 ⇒ 9:35 ブナ坂 9:40 ⇒ 奥多摩小屋 10:05 ⇒ 小雲取山 10:40 ⇒ 10:55 雲取山 11:20 ⇒ 小雲取山 11:40 ⇒ 唐松谷分岐 13:05 ⇒ 吊橋 13:20 ⇒ 日原林道出合 13:35 ⇒ 八丁橋 14:30 ⇒ 東日原P 15:25

2:20 東日原 有料駐車場

駐車場は私の車のみで、登山者の姿はどこにもなし。コンビニで買ったおにぎりを食べて、ゆっくり身仕度を整えた。2:40 確実に日の出時間(6:50前後)に間に合わせるため、早めに駐車場を出発。星がよく見えていた。ちなみに同じコースを嫁と登ったときは、鷹ノ巣山まで3時間45分かかっている。東日原の集落は交番以外に明かりのついた家はほとんどなく、寝静まっていた。

2:50 集落から登山口へ入り、いったん日原川まで下る。集落を離れたとたんに周囲は真っ暗闇となった。

巳ノ戸橋を渡る。ここから先は山道となる。

周囲を照らすと、得体の知れない不気味さを覚える場所もあり、独りで暗闇を歩く心細さをひしひしと感じた。

しばらく沢沿いの道が続き、小さな木橋を何度か渡る。風はなく、汗をかき始めたので、途中でフリースを脱いだ。

3:40 稲村岩分岐を通過。後ろからハイカーが追いついてきているような気がして、何度か振り返った。すると光の行列が遠くに見えたので、団体ハイカーが日の出時刻に合わせて後から来ているのだと思った。 追いつかれるのは嫌なので、しばらくペースを上げたのだが、ふと思い直して光の方角を確かめると、光は動いておらず、東日原の街灯だと気が付いた。 臆病風に吹かれたかと自分を笑いながら再び上り始めた。樹木の影が揺れたり木の葉が動くたびに、心が敏感に反応する。本能的な恐れは生存に必要なものだが、歩いているうちに怯えの混じった反応から注意深いというレベルの反応に変わり、いつしか周囲と一体となるような感覚が生まれた。
近くで物音が激しくしたと思ったら、山鳥(?)がヘッドライトの光を横切り、次は威嚇するように頭上近くを飛んだ。縄張りの主張か、巣でも近くにあったか、この時ばかりは肝をつぶした。
途中から風が猛然と吹き始め、体感温度は一気に降下。カメラは寒さのために起動しなくなり、素手で温めながら写真を撮らなければならず(その状況は昼まで続いた)、手袋を外すたびに手がかじかむのでどうにも閉口した。凍った地面は銀粉を散らしたようにキラキラと輝いていた。

5:15 ヒルメシクイノタワに到着。猛烈な風に身体の芯から冷えてしまったので、ダウンとストームクルーザー上下、着られるものを全て着込んで手袋も二重にした。

小腹が減ったのでパンを食べたが、寒さでパンが固くなり、顎も硬直してスムーズに動かず難儀した。いつの間にか、ボトルの飲み物はシャリシャリに凍っていた。

東の方角に街の明かりを見て、だいぶ上まできたと感じた。かなり早い時間に山頂に着いてしまいそうだと思ったが、寒くてじっとしていられないので、とりあえずゆっくり進むしかなかった。右足のかかとが擦れて痛みを感じていたが、寒くてテーピングをやり直す気になれなかった。

6:00 鷹ノ巣山

道標が出てきて鷹ノ巣山の山頂に出たと分かった。テントが2張りあって、片方だけ淡い光が付いていた。

日の出時刻まで1時間近くあったが、独りでじっと待つしかなかった。幸い山頂は風が穏やかだったが、徐々に身体が冷えてきて、そのうち手足の感覚がなくなってきた。

時間とともに山頂に到着する登山者がちらほら出てきて、テント泊のハイカーもごそごそ動き出していた。身体が芯から冷えて座っていられなくなり、立って身体を動かした。

テルモスに入れた温かいお茶を飲みながら待つこと50分。その間に「さっきオーロラが見えたよ」と吹聴する変なおじさんハイカーに声を掛けられた。後頭部には寒さが原因と思われる鈍痛を感じていたが、6:50 ついに初日の出の時刻はやってきた。

太陽は数分でみるみる上がってくる。iphoneでも写真を撮りたかったので、少し慌ただしかった。

富士山方面。

朝陽に淡く染まる富士山。

鷹ノ巣山の山頂も見事に紅く染まっていた。

2016年は、ほぼ完璧な初日の出を拝むことができた。寒さに凍えながら待った甲斐があった。

陽の光でザックを見ると、霜が付いて白くなっていた。

7時を回るとほとんどのハイカーは下山していなくなった。

山頂から西側に少し下りると、飛龍山と雲取山、芋ノ木ドッケが並んで見えた。

飛龍山の左側には南アルプスがずらり。

身体は冷えきっていたので、そのまま下山しようと考えていたが、写真を撮っているうちに何となく鷹ノ巣山避難小屋の方へ下りてしまい、戻るのもどうかと思い始めた。

7:20 鷹ノ巣山避難小屋。ここまで来たら予定通りに雲取山まで行こうと決意する。テーブルベンチで右踵のテーピングをし直して、ダウンなどをしまった。

ボトルの口が氷でふさがってしまったので、指で氷を落として飲んだ。シャリシャリの冷え冷えで身震いした。

避難小屋からは開放感のある石尾根歩きとなる。陽射しを受けながらさわやかな気持ちで先へ進んだ。

20分ほど歩くと眺めのよい開けた場所に出た。富士山がよく見えていた。

テントが2つ張られていて、1つは撤収を始めていた。

振り返って見た鷹ノ巣山。霜が降りて地面はまだカチカチに凍っていた。

日蔭名栗山は開けた場所から少し進んだところにある。

7:55 日蔭名栗山を通過。

日蔭名栗山の道標から少し進むと、再び眺めのよい尾根となり、前方に南アルプス、飛龍山、雲取山が見えた。飛龍山の手前、真ん中あたりに七ッ石山も見える。

南アルプス。左端の聖岳から、赤石岳、悪沢岳、塩見岳、農鳥岳、間ノ岳、北岳、鳳凰三山、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳。

高丸山手前の分岐で巻き道へ進んだが、20mほど歩いたところではたと立ち止まり、考え直して分岐に引き返した。

元日から巻き道を選択するようでは年の初めからケチがついてしまう。全てのピークを踏んで行くぞと急坂を上った。

8:20 高丸山に到着。足場の少ない急坂でふくらはぎの負担は大きかったが、気持ちが定まった。

高丸山の道標と富士山。

西側に延びる稜線の先に、これから向かう千本ツツジと七ッ石山が見えた。千本ツツジの上は南アルプス。

石尾根は開放感があって気持ちよく歩ける。身体もすっかり暖まって気分は上々だった。

手頃な岩があったので、一休みしておにぎりを食べた。

広い稜線を進み、8:55 千本ツツジを通過。

登山者の姿はまったくなくて、結局、七ッ石山の手前まで誰とも会わなかった。

山道脇で餌をあさるウソのつがいを見つけた。10分ほど粘って近づいたが、よい写真は撮れなかった。

9:10 七ツ石小屋との分岐を通過。ここまでくると七ッ石山はもう近い。

七ッ石山手前の短い坂で、左ふくらはぎと右太ももが攣りそうになった。もうきたかと思いつつ静かに歩を進めた。

9:25 七ッ石山

七ッ石山に到着。単独ハイカーが風を避けるようにして、一段下がった窪地で休んでいた。

七ツ石山の山頂から、これから歩くヨモギノ頭、小雲取山、雲取山と続く石尾根が一望できた。

石尾根の左に見えた南アルプスと飛龍山。

急坂を下り、9:35 ブナ坂に到着。飲料水をボトルに補充して先へ進んだ。

ブナ坂からは小屋泊まりの団体やテント泊のカップルなど、多くのハイカーとすれ違った。

相変わらずカメラは温めないと起動しないが、撮りたくなる眺めが続く。南アルプスもこれ以上ないほどクリアに見えていた。

ヘリポートの手前からヨモギノ頭、雲取山、小雲取山が並んで見えた。

10:05 奥多摩小屋を通過。小屋の前から眺めた富士山方面。

奥多摩小屋から小雲取山までは急坂の連続だが、しんどくても構わないと覚悟を決めた途端にさほど苦にならなくなるから不思議なものだ。攣りそうになる足をごまかしながら無心に歩いた。

小雲取山手前の急坂。

10:40 小雲取山の分岐を通過。小雲取山を過ぎると、飛龍山の隣に北奥千丈岳や甲武信ヶ岳、三宝山などが見えてくる。

雲取山山頂が近づいてきた。日没時間(16:40前後)から逆算して、正午には雲取山からの下山を開始する必要があると考えていたが、予想以上に早く来た。休憩する時間の余裕ができてホッとした。

10:55 雲取山 2,017m

雲取山に到着。数人のハイカーが休んでいた。

そのまま東京・埼玉側の山頂に移動。

西側の眺め。左に南アルプスと飛龍山、右には北奥千丈岳、木賊山、甲武信ヶ岳、三宝山。

左から、飛龍山、北岳、鳳凰三山、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳。先月20日に来たとき同様、くっきり見えた。

飛龍山の左奥に並ぶ南アルプス。左から布引山、笊ヶ岳、上河内岳、ほぼ真ん中に聖岳、赤石岳、悪沢岳、右に塩見岳。

樹間に見えた和名倉山。

誰もいなかったので、方位盤にカメラを載せてセルフ撮影。

山梨側の山頂に戻っておにぎりを食べ、しばし眺めを楽しんだ。元日から好きなようにさせてもらえて本当にありがたいなぁと、しみじみ感じた。

真ん中奥の鷹ノ巣山の右隣に大岳山と御前山、その手前は高丸山と日蔭名栗山、右端には小雲取山と七ツ石山も見えて、眼下に歩いてきた稜線を一望できる。

東側。左に大平山、真ん中あたりに三ツドッケと蕎麦粒山、右に川苔山と本仁田山。

南南東には丹沢山地もよく見えていた。

30分間休もうと思っていたが、あっという間に時間は過ぎてしまった。

下山の準備をしていると、30歳前後の男性ハイカーが上ってきて、先に着いていた2人組に「なんで待たねえんだよ! お前達とはもう無理だ!! 登れない! 山では一番遅い奴に合わせんだよ。初心者と登ったらすぐ遭難だぞ」と、山頂に着くと同時にかなりの剣幕で文句を言い始めた。 すると先着の片割れが、「面倒だから初心者なんかと登らねえよ」と言い放ち、さらにムードは険悪に。 せっかくの元日登山なのだから、仲良くすればいいのにと思いつつ、11:25 下山開始。彼らは仲直りしたのだろうかと、ちょっと気になったが、天気もよいことだしすぐ仲直りしただろうと思うことにした。

再び素晴らしい眺めの石尾根を進む。下山する頃になって、やっとカメラが温めなくても起動するようになった。

11:40 小雲取山の分岐に到着。

分岐から富田新道に入り、野陣尾根を下る。

綺麗なダケカンバの樹林帯を通過。最初はゆるやかな起伏を進むが、少しの上り返しがキツかった。

分岐から30分ほど進んだ後は急坂が延々と続いた。落葉の下が凍結していたので慎重に下った。

踏み跡がほとんどない所もあったが、赤テープが絶妙に配してあり、とても助かった。

13:05 唐松谷林道との合流点に到着。長い下りに両膝がガクガクになっていた。

13:20 吊り橋を渡る。野陣尾根では誰とも会わず、結局駐車場まで人と会うことはなかった。

吊り橋を渡ってから林道に出るまで上りが続く。長いと分かっていたが、記憶よりもさらに長く感じた。

13:35 日原林道

日原林道に出た。ここから林道歩きが2時間続く。

車も人もいない林道をひたすら歩き、14:30 八丁橋を通過。車は1台も停まっていなかった。

元日だけあって通る車は皆無。水溜まりを見るとガチガチに凍結していた。

足が棒のようになって前に出ないので、ストックで何とか推進力を生み出した。15:00 小川谷橋を通過。

集落に入って稲村岩が見えた。後ろから車が1台通り過ぎたが集落は閑散としていた。重たい身体を引きずるように歩きながら、やりきった心地よさを感じていた。

15:30 東日原の駐車場に到着。明るいうちに日原街道を抜けようと、身仕度してすぐ駐車場を後にした。日原街道では落石ネットをよじ登る野猿を2匹見かけた。歩きながら考えるはずだった1年の計を何も考えていないことに気づいたが、それでよいと思えた。