乾徳山

2,031 m

 花見とハイクで迷ったが、桜は散り始めで天気は関東全域快晴ということで、今回は山を選択した。3時前に起床、3時10分出発。現地には6時に到着した。険しい岩場と標高差1,000m以上の上りに、かなりの苦戦を予想していたが、思ったよりも疲労を感じることなく乗り切れた。広々した眺めのよい尾根歩きと360度遮るもののない山頂の大展望、スリル満点の鎖場を登り切った達成感もあり、山歩きの楽しさを満喫することができた。早い時間に登り始めたので、鎖場では前後を気にすることなく落ち着いて登れたし、山頂へ一番乗りしたので狭い岩峰でも比較的快適な場所を確保できた。下山時には上ってくるハイカーと何度かすれ違ったが、終始静かな山歩きを楽しめた。

 現地を13時40分に出て、帰宅したのは18時。秩父市内でノロノロ運転が続き、往復7時間を超える運転に最後はへとへとになったが、疲れただけの価値はあった。百名山に入っていないのが不思議に思えるほど、乾徳山は山歩きの楽しさを凝縮した名峰だった。

登山コースデータ
登山日/天候 2009年4月11日 土曜 / 快晴
ルート所要時間 駐車場6:15→登山道入口6:30→銀晶水7:00→国師ヶ原8:00→扇平8:40→9:45乾徳山山頂10:50→扇平11:50→国師ヶ原12:15→銀晶水12:50→登山道入口13:10→駐車場13:25
難易度データ (≒) 標高差 : 1,131m / 累積標高差 : 1,155m / 歩行距離 : 9.2km / 標準歩行時間 : 6時間35分

乾徳山登山口バス停の向かいにある公園トイレに寄ってから、集落上端の砂利場に車を停めた。

セメントで荒く固めた凸凹の林道をしばらく歩く。早朝からすっきりと青空が広がっていた。

登山口の先に「熊注意」の大きな看板が立てられていた。嫁は鈴の用意をしてから登山道へ。

最初はオソバ沢に沿ったゆるやかな上りが続く。日陰でもさほど寒くはなく、じっとりと汗をかくくらいだった。

林道を横切りさらに上って、一つ目の水場「銀晶水」に到着。ちょろちょろと水量は僅かだった。

銀晶水の前後にカケスがたくさんいた。

銀晶水を過ぎると周囲は自然林に変わり、大きな石がゴロゴロと目立ち始める。上りも若干きつくなった。

坂がゆるやかになつて笹の下草が目立ち始めると、二つ目の水場「錦晶水」に出る。

錦晶水の方が水は豊富だった。

ゆるやかな道を進むと林が切れて正面に乾徳山が見えてくる。

錦晶水から15分ほどで分岐点の国師ヶ原に到着。

シラカバなどの自然林を抜けると、広々としたススキの草原に出た。濃い青空と風が心地よかった。

背後に広がる富士山と南アルプスを何度も振り返った。

大菩薩嶺の上りを思い出した。

上り切ると月見岩(右)があり、そこから左の乾徳山へ広い尾根を歩く。

開放感があってとにかく気持ちがよい。

8:40 扇平に到着。出発から約2時間半かかった。

扇平からが本番、険しい岩登りとなる。

岩場が多くなってきたので、杖をしまって上る。

日陰に雪がけっこう残っていた。

髭剃岩から先は、鎖や梯子をつかって越えていく岩場が続き、適度なスリルがある。

岩に矢印がつけてあるが、ここを行くの? と若干迷う箇所もあった。

サイドがスパッと切れ落ちていると高度感があって緊張する。

景色を眺めるときは、しっかり岩につかまる。

丸太の梯子は脆弱に見えた。

雪でつるつるの道があったり油断はできない。

第一関門の鎖場出現。

足場となる凹凸があるので、三点支持だけ注意して登れば問題はない。

最初の鎖を登り終えると、次は鎖が2本ぶら下がっていた。

登りやすそうな右側を行った。

鎖場を過ぎると、眺めの良い場所が続いた。

富士と南アルプスの絶景に疲れも吹き飛んだ。

ついに山頂直下、天狗岩の鎖場が見えてきた。

他の登山者が来ないうちに登りたいので先を急いだ。

最大の難所に到着。高さは20m弱。

嫁は安全な巻き道に行くかしばし迷っていたが、結局挑戦すると言い出した。

三点支持を確認しながら嫁はゆっくり登って行く。

すべすべの一枚岩だが縦のクラックに足がかかる。

足場のしっかりした中段で休んで、嫁はさらに上へ。姿が消えて、山頂に出たと声が聞こえた。

私も続く。鎖を頼りに腕力で登った。思ったよりも楽に登れたが、上から見るとさすがに怖い。

誰もいない山頂に到着。大岩がゴツゴツで、平らな場所がない山頂だった。

山頂は360度の絶景が広がる。南には富士山。富士の右には無毛山、左には御正体山や三ツ峠山が見えた。

南西から西にかけては南アルプスの山並。眺めを楽しみながら、誰もいない狭い岩峰で食事にした。

南アルプス。左から布引山、笊ヶ岳、上河内岳、中央に前聖岳、赤石岳、悪沢岳、右には蝙蝠岳、塩見岳、農鳥岳。

左から間ノ岳、北岳、地蔵岳、仙丈ヶ岳(ほぼ中央)、甲斐駒ケ岳、鋸岳と続く。右端の白いのは木曽駒ケ岳。

左から前聖岳、赤石岳、悪沢岳。

左から間ノ岳、北岳、地蔵岳。

仙丈ヶ岳と甲斐駒ケ岳。

東方面。中央に唐松尾山、その左に白石山、右には雲取山と大洞山。

東南東方面。左にうっすら大岳山と三頭山(手前に鶏冠山)、中央に大菩薩嶺、その右に小金沢山。

しばらくすると次々にハイカーが登ってきた。

登山者に連れられた黒いわんちゃんは、下り梯子を前に震えていた。

ゆったりと快適な時間を山頂で過ごした。満足いくまで写真を撮ってから下山の準備を開始した。

鎖場を登ってくる人が絶えないので、下りは巻き道へ進んだ。

梯子の下は雪が残っていて歩きづらかった。

山頂を下りてもしばらく絶景が続く。満ち足りた気分で先へ進んだ。

見返すと山頂直下の天狗岩を登っていくハイカーの姿が見えた。

登ってくるハイカーが途切れたところで、鎖場を降りる。鎖にしっかり掴まって慎重に下った。

鎖を無視してサクサク上ってしまう中年男性がいて驚いた。クライミングの心得がある人は動きが違う。

岩場の後は樹林帯を下る。

1時間で扇平へ。岩場でくつろぐハイカーが多かった。

国師ヶ原まで素晴らしい眺めを楽しみながら下った。

国師ヶ原と錦晶水を過ぎてどんどん下る。

よく上ったと感心するくらい、ひたすら下りが続く。

気温が上がって喉が渇いた。銀晶水で一息入れて、さらに下る。

最後まで快調なペースで歩けた。

沢の音が近くなって、ついに登山道入口に到着。

林道にクジャクチョウが止まっていた。

疲れが出て林道歩きが長く感じられた。

13:25 車の増えた駐車場に到着。7時間に及ぶ素晴らしい山行でした。