2012年8月28日 火曜日
槍・穂高縦走登山 2日目
大喰岳・中岳・南岳・北穂高岳
3,101 m 3,084 m 3,033 m 3,106 m
|
||||||||
|
コースタイム
槍ヶ岳山荘 6:10 ⇒ 6:45 大喰岳 7:00 ⇒ 7:45 中岳 7:55 ⇒ 9:10 南岳 9:20 ⇒ 9:25 南岳小屋 9:40 ⇒ 長谷川ピーク 11:25 ⇒ 11:45 A沢のコル 11:55 ⇒ 北穂高小屋 13:35
4:05 起床 槍ヶ岳小屋
4時半に外に出ると、すでに槍ヶ岳の山頂にヘッドライトの光があった。
よく寝られたので目覚めすっきり。高山病の症状もなかった。
夜明け前の静寂な世界は、いつも厳かで清浄に感じられる。
空が徐々に朝焼けに染まり始めた。
5時過ぎの日の出時間に合わせて、稜線上に陣取るハイカーたちが増えてきた。
日の出前の朝焼けは見事だった。東の雲海には本白根山、四阿山、浅間山などが浮かび、常念岳の影の右には、美ヶ原と八ヶ岳の峰々が見える。
八ヶ岳の右には富士山と南アルプス。名だたる名峰が勢揃いして、朝焼けの空をよりいっそう印象深いものにしていた。
四阿山と浅間山の間が黄金色に輝き始め、日の出の到来を予感させた。
5:12 御来光は穂先の右から。山頂で日の出を眺めると、毎回格別な喜びを感じる。景色が美しいのはもちろんだが、それ以上に心が洗われて生まれ変われるような希望を感じられるのがよい。
太陽の動きを目視できることは普段ないが、その速さは意外なほどに感じられる。感覚的には、あっという間に上がってくる感じ。
雲海に浮かぶ富士山と南アルプス。
モルゲンロートに染まる稜線。驚くような光のマジックも、ほんの一瞬で終わってしまった。
5:30 朝食を食べ終える。献立は焼き魚と味噌汁その他。ごく普通の朝ご飯だった。
6:10 槍ヶ岳山荘を出発。
朝から槍ヶ岳山頂には多くのハイカーが登っていた。
山荘南側のテント場の脇を通って通って大喰岳へ。
テント場は段々畑のように角材で区画されており、狭い斜面に工夫して作られていた。
斜面をジグザグに飛騨乗越まで下る。
リンドウ科のトウヤクリンドウ。
飛騨沢へ下る道を右に分けて上り返す。
振り返って眺めた槍ヶ岳と山荘。左下にのびるのが飛騨沢へ下る道。
大喰岳の山頂まで、岩ガレを90mほど上る。
遠のいていく槍の穂先と山荘。
縦走路からすこし左に入った尾根上に山頂標があった。
6:45 大喰岳に到着。
どちらを向いても素晴らしい眺めが広がっていた。
北西側。左から黒部五郎岳、三俣蓮華岳、薬師岳、水晶岳と続く。黒部五郎岳の右手前は双六岳で、そこから逆S字に樅沢岳と西鎌尾根の稜線が左手前まで延びている。なだらかな薬師岳の右手前は鷲羽岳。
北側には乗鞍岳と御嶽山が重なり、右手前には焼山も見える。
大喰岳の山頂から眺める槍ケ岳は素晴らしいの一言。絶好の撮影ポイントと言える。
ほれぼれするような山容の美しさ。槍沢のU字谷から眺めた槍ヶ岳の美しさには別格の山という印象を受けたが、大喰岳から眺める槍ヶ岳からますますその印象を深くした。まさに比類なき山と言える。
槍ヶ岳山荘の左上には立山がくっきり見えていた。
北北東、槍ヶ岳の右には妙高連山。左から焼山、火打山、妙高山、高妻山、黒姫山。手前は餓鬼岳と燕岳。
東側の雲海に浮かぶ岩管山、横手山、草津白根山、四阿山、浅間山。真ん中は大天井岳から横通岳の稜線で、その手前は赤岩岳から西岳の稜線。
東南東には美ヶ原と八ヶ岳。手前は常念岳から蝶ヶ岳へ至る稜線。
南東方面には富士山と南アルプス。左から甲斐駒ケ岳、北岳、間ノ岳、塩見岳、烏帽子岳と並んでいる。
先へ進もうかと思いつつ、何度も振り返って槍ヶ岳を眺める。
7:00 大喰岳を出発。西の方角には笠ヶ岳が見えていた。
笠ヶ岳の上は日本三霊山のひとつ、白山。
前方にはこれから向かう中岳、南岳、北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳が一つの山塊のように重なって見えた。
大キレット越えには天気の安定が欠かせないが、これならチャレンジできると気合が入った。
稜線上の起伏があまり見えないので、奥穂高まで近いように見えた。
広大な眺めが広がる稜線歩き。
緩やかなアップダウンを進んで鞍部へ下る。
まさに北アルプスと感じるような雄大な稜線歩きが続く。
鞍部から中岳山頂まで上り返す。
岩ガレの道が続いていた。
筋肉痛もなく、歩き始めは昨日の疲れはあまり感じなかった。
山頂直下に連続する鉄梯子を上る。
岩ゴロを上り詰める。
7:45 中岳山頂に到着。
歩いてきた北側の稜線を眺める。中岳から望む槍ヶ岳も素晴らしかった。
角度がかわって槍ヶ岳の右に白馬岳が見えていた。左から針ノ木岳、旭岳、白馬岳、白馬鑓ヶ岳、中央手前に蓮華岳、五龍岳、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳。
西側には笠ヶ岳が大きい。右には抜戸岳。笠ヶ岳の左上には白山も見える。
7:55 10分ほど眺めを楽しんでから南岳へ向かった。左側からなだらかな稜線が南岳へと続いている。
つづら折りの岩ガレ道を鞍部まで下って行く。
歩くほどに景観が変わって飽きさせない。
歩きづらい岩ゴロの斜面を進む。
道があってないような所もあるので、矢印にそって進む。
岩ゴロからしっかりした道になった。
中岳カールには雪渓があり、水場もあるらしいが、どこにあるかは分からなかった。背後には中岳、大喰岳、槍ヶ岳と続く稜線。
鞍部から再び稜線上に出る。道がよく整備されていた。
馬の背状の稜線歩きは、まさに雲上散歩の如し。素晴らしかった。
稜線を進むと、南岳と天狗原稜線分岐が見えてきた。
天狗原稜線分岐の向こうは雲海と南アルプス。
小ピークの左腹を巻いて進む。
高度感のある巻き道。落ちたらアウトなので油断はできない。
天狗原稜線分岐が近づいてきた。
8:50 天狗原稜線分岐に到着。
天狗原稜線分岐から槍ヶ岳方面を眺める。東斜面のカールはまさにスプーンでえぐったかのよう。
周囲の展望を楽しみながら先へ進んだ。
あまりに心地よいので、このあとの大キレットのことはほとんど考えていなかった。
なだらかな道の先に南岳の山頂があるので、北側から見るとピークという感じはあまりしない。
9:10 南岳山頂に到着。
この日だけで3つ目の8,000m峰。2日目の天気を心配していただけに、最高の気分だった。
振り返ると歩いてきた稜線の向こうに槍の穂先。素晴らしい展望としか言いようがない。
大天井岳から常念岳に続く稜線。手前は赤岩岳から赤沢山に続く稜線でその下には天狗原が見える。
南岳から眺めた笠ヶ岳と抜戸岳。左奥は白山。
しばし眺めを楽しんでから南岳を出発。
南岳小屋へ下る。
小屋の屋根で布団を干しているのがよく見えた。
南岳小屋に到着。
すぐにも大キレットへ向かいたかったが、嫁が休みたいと言うので小休憩することに。
小屋の近くに注意を促す看板が。しっかり読んでおいた。
獅子鼻岩展望台から見た大キレットと北穂高岳。大キレットを進む登山者の姿が目視できた。左下は本谷カール。
9:40 いよいよ大キレットに挑戦。先行するハイカーが数名いた。
初っ端から崩落気味の嫌なガレ場の急下降が続いた。
すぐ下に先行者がいるので落石に細心の注意を払う。
これでもかというくらい続く急下降。
平らな棚で一息入れて、また下る。
落石を起こさないよう、慎重に下る。
先行ハイカーが真下に見えるほどの急勾配。
もう少しで一段落かなと思ったら…。
長い鉄梯子が出てきた。
鉄梯子を下って大キレットの底へ向かう。
こちらは2つ目の鉄梯子。
2007年に新設されただけあって、梯子はしっかりしていた。
振り返ると獅子鼻岩の岩峰がそびえ立つ。写真ではその巨大さが到底伝わらない。
下り始めた登山者の姿が米粒のように見えた。
最低鞍部付近は岩もしっかりして道幅もあり、何の不安もなく歩くことができた。
岩稜の西、飛騨側を巻くように進む。
キツイ上り返し。
岩ゴロの細かいアップダウンが連続する。
振り返って獅子鼻岩から続く大キレットの前半部分を眺める。
起伏が多くて徐々に体力が奪われていった。
再び切り立った稜線の左、飛騨側を進む。
再び稜線上の岩稜帯を上って行く。
いつの間にか飛騨側からガスが湧き上がっていた。
11:25 長谷川ピークに到着。
いきなり着いたという感じ。
いよいよここから大キレットの核心部に入る。
左の信州側から右の飛騨側へ体を入れ替えるのだが、ここはちょっと怖かった。
自分のことよりも、ナイフリッジを進む嫁を見ている方がよほど怖かった。
3点支持と声を掛けながら進む。
深い谷を覗くとゾクゾクする。高所恐怖症の方にはかなりハードルが高いルートなのは間違いない。
北穂高から下りてくる団体が見えたので、A沢のコルまで早く下りたかったが、とても急げる場所ではなかった。
下はスッパッと切れ落ちているが、足場の補助もしっかりあるので、予想以上に順調に行けた。
A沢のコルを出発しようとしていた団体が我々に気づいて、しばらく待っていてくれた。
自分と嫁の動きに集中していたためか、高度感に恐怖を感じることはほとんどなかった。
11:45 A沢のコルに到着。
ここで槍ヶ岳山荘のちまき弁当ひとつを2人で分けてを食べた。
長谷川ピークへ向かう団体。
少し後に降りてくる登山者の姿が見えた。
A沢のコルを出発。振り返ったキレットに人の姿があった。
A沢のコルから北穂高までは300m以上の急登が続く。
ここからの上りがきつかった。
休みがてらキレットを振り返ると、長谷川ピークに向かう団体が見えた。
列をなして上って行く登山者たち。思わず見入ってしまった。
遠くから眺めると、とんでもない所を登っているように見える。
手足をつかって岩の急登をよじ登って行く。
足場の広いところでひと休み。
ガスが切れて、南岳から続く大キレットの稜線が一望できた。
長谷川ピークのナイフリッジに人が立っているのが見えた。それにしても凄い稜線です。
蓄積された疲労で身体が重かった。
急登の連続に嫁もペースダウン。
かなり苦戦したクサリ場。背丈ほどの段差があって、クサリを頼りに腕力で身体を上げるしかなかった。
無心で岩を上る。この先に飛騨泣きがあった。
飛騨泣きはクサリと足場が付けられていて難易度は高くないが、足の下はスパッと何もなかった。
無事に飛騨泣きをクリア。下調べで足場がしっかりあることは分かっていたが、ホッとした。
下からは山頂のように見えていた岩峰を巻いて行く。まだまだ遠い。
ルンゼ状の長いクサリ場を上る。
途中から大キレットは技術的というより体力的にキビシイと感じてきた。
浮き石の多いガレ場を上る。
やっと北穂高岳の頂に北穂高小屋が見えてきた。
垂直に切れ落ちた滝谷の岩壁。
初日の槍ヶ岳山荘前の上りもつらかったが、この最後の大上りもそれに匹敵するほどキツかった。
「北ホ あと200m」の文字を目にして一瞬思考に空白が生じ、距離じゃなくて標高差と認識。まだそんなにあるのかと、励ましよりも落胆を感じた。
岩場の急登には、梯子とクサリ、さらには鉄杭も打たれていた。
私も嫁も完全に失速。立ち止まることが多くなった。
少し先を行っていた若者も、乱れた呼吸であえぎながら上っていた。
すぐ上に小屋が見えているのに足が上がらない。ただただしんどかった。
13:35 北穂高小屋に無事到着。A沢のコルから1時間40分。長かった。
C.C.レモンで乾杯。疲労と緊張の後だけに、これがもう堪えられない美味さでした。
穂高岳小屋まで行くか迷ったが、北穂高小屋に泊まることにした。1泊2食弁当付で1人1万円也。ちなみに競泳の萩原智子さんを見かけた。番組ではなくプライベートのようだった。
北穂高岳の山頂は小屋脇の石段を数m上がればすぐ。
小屋前のデッキから下をのぞくと、ブロッケン現象のような光の環が見えた。
ガスが出ていて、展望はあまりきかなかった。
眼下には涸沢カールと雪渓。
涸沢ヒュッテとテン場。50を超えるテントが幕営していた。
しばらく眺めを楽しんでから小屋の中へ移動。
この日は平日とは思えない混雑ぶり。布団2枚に3人と言われていたが、結局1人1枚の布団で寝られた。
17時に夕食をいただき、その後は夕焼けを目当てに外で待機。ちなみに夕食は豚の生姜焼きで美味でした。
槍ヶ岳方面はガスがずっとかかっていた。大キレットも最後までクリアには見えなかった。
明日向かう涸沢岳、奥穂高岳、前穂高岳。ガスがかかったり、晴れたりしていた。
日の入りは積雲に阻まれてしまったが、うねるように湧いては消える雲が印象的だった。
暮れてゆく雲上の景色を眺めているうちに、身体が冷えてきた。
標高が高くて空気がクリアだからか、デジカメでも月がよく撮れた。
18:20 小屋へ戻った。夕方からお酒を飲んでいる人が多かったが、夜は静かでした。
4時過ぎに起床。朝食前に出発の準備を整えて日の出を迎えた。槍の穂先の右側から朝日が昇り、しばしの間 素晴らしい朝焼けを楽しむことができた。大喰岳から中岳、南岳と続く3,000mの稜線歩きは、まさに雲上散歩といった趣で、360度どちらを眺めても見事なパノラマが広がっていた。これ以上の稜線歩きはないと思えるほど素晴らしかった。
大キレットは危険を感じるよりも、体力的にキツかった。長谷川ピークを過ぎてからの区間は緊張を強いられたが、あとは比較的すんなり越えることができた。それよりも、A沢のコルを過ぎてからの上りがこたえた。北穂高小屋直下の急登は、蓄積された疲れもあって足が進まず、何度も立ち止まりながら何とか上り切った。時間的に穂高岳山荘まで足を延ばすか迷うところであったが、無理はせずこの日は北穂高小屋に宿泊。時間に余裕があったので、入念にストレッチを繰り返し、あとはのんびり過ごした。予想以上に混んでいて驚いたが、結局1人1枚の布団で寝ることができた。